38歳、真島シンジ。
今日もクローゼットの前で、お気に入りのネイビーのスーツに袖を通す。
鏡を見る。
──悪くはない。悪くはないはずだ。
でも、なぜか胸元が浮き、肩のラインが落ち着かない。
「なんか違う…」
この既視感のある違和感。
雑誌で見たモデルのようには、決してならない。
「また太ったせいか?」「いや、年齢で肉の付き方が変わったのか?」
そんな風に、自分の“体型”や“センス”のせいにして、ため息をついたことはありませんか?
実は、その「なんか違う」の根本原因は、太った・痩せたといった体型の変化ではなく、生まれ持った“骨格”にあるかもしれません。
骨格診断は、ファッションにおける「設計図」のようなもの。自分の設計図を知らずに服を選んでも、しっくりこないのは当然です。
この記事では、骨格診断の「ストレート」「ウェーブ」「ナチュラル」という3タイプ別に、あなたに本当に似合う「勝てるスーツ」の選び方を、専門家の知見や信頼できるデータを交えて徹底解説します。
ソウタシンジさん。そのスーツ、また「骨」と喧嘩してますよ。



……骨と喧嘩ってなんだよ。朝から不吉な。



それは骨格に合っていない可能性が高いです。“似合わない”はセンスではなく構造の問題ですよ。
骨格診断でわかる「似合う・似合わない」の法則
「骨格診断」という言葉は聞いたことがあっても、それがスーツ選びにどう直結するのか、ピンときていない人も多いかもしれません。
簡単に言えば、「自分の体の“フレーム”に合った服のデザインを見つける技術」です。
太ったり痩せたりする「肉付き(体型)」ではなく、生まれ持った「骨組み(骨格)」に注目するのが最大の特徴。
だからこそ、一度知れば一生使える“軸”になります。
骨格診断の3タイプとは?
骨格診断では、体のフレームや筋肉・脂肪の付き方の特徴から、大きく3つのタイプに分類されます。
- ストレートタイプ(上重心)
- 特徴: 筋肉がつきやすく、体に厚みがある。ハリのある肌質。
- 印象: リッチ、グラマラス、立体的。
- 有名人イメージ: 鳩胸で、腰の位置が高い、いわゆる「欧米人体型」に近い。
- ウェーブタイプ(下重心)
- 特徴: 骨が細く、体は薄め。筋肉より脂肪がつきやすい。
- 印象: ソフト、華奢、曲線的。
- 有名人イメージ: 上半身が薄く、重心が下にあるため、華奢な印象を与える。
- ナチュラルタイプ(中性的・フレーム重視)
- 特徴: 骨や関節がしっかりしている。筋肉も脂肪も感じさせない。
- 印象: カジュアル、ラフ、スタイリッシュ。
- 有名人イメージ: 肩幅や手足の関節が目立ち、モデル体型とも言われる。
大手通販サイト「セシール」の骨格スタイル分析ページでも、これら3タイプの特徴とコーディネート例が詳しく紹介されています。
自分がどれに当てはまるか想像がつかない人は、まずはセルフチェックで大まかな傾向を掴むのがおすすめです。
骨格は「一生変わらない」
「いやいや、俺は20代の頃と今じゃ全然体型が違うよ」
そう思うかもしれません。
確かに、年齢や運動習慣、食生活によって「体型」は劇的に変わります。
お腹周りに脂肪がついたり、逆に筋肉が落ちて華奢になったり。
しかし、骨格診断で見る「骨の太さ」「関節の大きさ」「重心の位置」といった“フレーム”そのものは、一生変わりません。
だからこそ、骨格はファッション選びにおける“変わらない羅針盤”になるのです。
骨格を知ることで「外見力」が上がる
なぜ、これほど骨格診断がビジネスシーンで注目されるのか。
それは、スーツという「戦闘服」のパフォーマンスを最大化できるからです。
骨格スタイル協会の認定アナリストである武田みはる氏は、前述のコラムで「骨格タイプを知ることは外見力を磨く一生モノの知識」と述べています。
スーツが似合わないと感じる人の多くは、自分の骨格の「長所」を殺し、「短所」を強調するデザインを選んでしまっています。
例えば、筋肉質で胸板が厚い「ストレートタイプ」の人が、薄手で柔らかい素材のスーツを着るとどうなるでしょう?
体のラインを拾いすぎてしまい、ピチピチとした「無理してる感」や「窮屈さ」が出てしまいます。
逆に、骨格が華奢な「ウェーブタイプ」の人が、分厚く硬い生地のスーツを着ると、「服に着られている」印象が強くなります。
自分の設計図(骨格)を知れば、こうしたミスマッチを構造的に避けられるのです。



骨格って、そんなに大事なんだ…。ダイエットより優先すべきことだったりして。



はい。体型は変わっても、骨格は変わりません。つまり“似合う軸”は一度知れば一生モノなんです。体重計に乗るより、まず鏡で自分の「骨」を見てください。



……なんか怖いよ、ソウタ。
骨格タイプ別「勝てるスーツ」の選び方
では、具体的に自分の骨格タイプに合わせて、どのようなスーツを選べば「勝てる」のでしょうか。
ここでは、素材・シルエット・ディテール(襟やボタン)の3点から、各タイプの最適解を探ります。
ストレート体型には「構築的でハリのあるスーツ」


体に厚みがあり、筋肉のハリを感じさせるストレートタイプ。
このタイプの強みは「立体感」と「高級感」です。
- 素材:中途半端な柔らかい生地はNG。体の厚みを拾ってしまい、太って見えます。ウール100%の高級感ある生地や、しっかりと織られたハリのある素材がベスト。光沢感があるものも似合います。
- シルエット:「ジャストフィット」が鉄則。ダボダボもピチピチもNGです。特に肩幅をジャストに合わせ、Vゾーンは深すぎず浅すぎず、胸の立体感を美しく見せる構築的な仕立てが似合います。
- ディテール:ラペル(襟)は標準〜やや広めが安定します。無地(ネイビー、チャコールグレー)や、目立たないストライプなど、シンプルで王道なデザインが最も魅力を引き出します。
ストレートタイプは、「引き算」が重要。装飾を盛るより、上質な素材とジャストサイズで勝負する。それが王道です。
ウェーブ体型には「柔らかく軽い素材」


上半身が華奢で、柔らかな曲線を持つウェーブタイプ。
強みは「ソフト」で「上品」な印象です。
- 素材:ストレートとは真逆で、硬く重い素材は「着られている感」が出ます。軽やかで、しなやかなドレープ(揺れ感)の出る柔らかい生地を選びましょう。モヘア混や、少し光沢を抑えた繊細なウールが似合います。
- シルエット:重心が下がりがちなため、ジャケットの着丈は「短め」が鉄則。ウエスト位置を高く見せることで、スタイルアップ効果が狙えます。パンツも細身のテーパードが似合います。
- ディテール:ラペル(襟)は細めを選ぶと、華奢な上半身とのバランスが取れます。ボタンの位置もやや高めがベター。チェック柄や千鳥格子など、少し装飾的な柄も得意です。
ウェーブタイプは、「足し算」が得意。ラペルピンやポケットチーフなどで、寂しくなりがちな胸元にアクセントを加えるのも効果的です。
ナチュラル体型には「ラフでこなれたシルエット」


骨格や関節がしっかりしており、フレーム感のあるナチュラルタイプ。
強みは「スタイリッシュ」で「抜け感」が出せることです。
- 素材:ウール100%のツルッとした素材より、リネン混、ツイード、フランネルなど、表情のある「自然素材」や「ラフな風合い」の生地が非常によく似合います。
- シルエット:ジャストサイズすぎると、骨格の強さが強調され「窮屈」に見えます。肩パッドを抜いたものや、ドロップショルダー気味の、少しゆとりのあるリラックスしたシルエットがベストマッチ。
- ディテール:ラペルはやや広めでもOK。ジャケットとパンツを別々の素材で合わせる「ジャケパンスタイル」が最も得意なタイプです。カッチリしすぎない「こなれ感」を意識しましょう。
ナチュラルタイプは、「崩し」が鍵。カッチリと決めすぎず、どこかにラフさを加えることで、持ち前のスタイリッシュさが際立ちます。



シンジさん。鏡を見る限り、胸板の厚みと腰の高さ…どうやら「ストレートタイプ」のようですね。



ぼく、ストレートみたい…。だから柔らかい素材のジャケットだと、なんかパツパツに見えてたのかも。



そうです。ストレートの魅力は「立体感」。ハリのある生地で、その構造的な仕立てがストレートの魅力を最大限に引き出します。
骨格に合わせたオーダースーツという選択肢
「自分の骨格タイプはわかった。でも、既製品でストレート向けの“ハリのある生地”で、かつ“肩幅ジャスト”で、さらに“ウエストもぴったり”なスーツなんて見つからない!」
そう、それが現実です。
既製スーツは、あくまで「標準体型」をベースに作られています。
骨格タイプごとの特徴(ストレートの肩の厚み、ナチュラルの関節の大きさなど)までは、当然カバーしきれません。
ここで浮上するのが、「オーダースーツ」という選択肢です。
骨格に基づくフィッティングの重要性
オーダースーツの最大のメリットは、「骨格と姿勢のズレ」を補正できる点にあります。
例えば、老舗テーラーの「麻布テーラー」では、単にサイズを測るだけでなく、顧客の体型(例えば「なで肩」か「いかり肩」か、「猫背」か「反り腰」か)を細かくヒアリングし、それを型紙に反映させます。
ストレートタイプの人が既製品を着ると肩が窮屈になりがちですが、オーダーなら肩周りに必要な「ゆとり(イセ込み)」を適切に入れることで、圧倒的に美しいシルエットが実現します。
骨格タイプという「設計図」を理解した上で、プロのフィッター(採寸士)に「施工(仕立て)」してもらう。
これが、似合うスーツを手に入れる最短距離です。
AI採寸で“似合う”を数値化
「とはいえ、いきなりテーラーに行って、自分の希望を伝えるのはハードルが高い…」
そう感じるシンジさんのような方(私です)も多いでしょう。
近年、そうした不安を解消する技術も進化しています。
それが「AI採寸」や「3Dスキャナー」の導入です。
例えば「グローバルスタイル」では、骨格診断の理論に基づいたAIによる画像採寸や、店舗での3D採寸を導入しています。
これにより、プロのフィッターの経験則だけでなく、客観的な「数値データ」として体型の微差を把握し、仕立てに反映させることが可能になりました。
自分の骨格をデータで“見える化”することで、なぜ既製品が合わなかったのか、どこを補正すべきかが明確になります。
費用対効果は“買い替えより賢い”
「でも、どうせオーダーって高いんでしょ?」
これが最大の誤解かもしれません。
もちろん、フルオーダー(一から型紙を起こす)は高額ですが、現在は「パターンオーダー」や「イージーオーダー」が主流です。
これらは、既存の型紙をベースに、骨格や体型に合わせて細かく補正していく方式です。
価格帯も、驚くほど既製品に近づいています。
- グローバルスタイル: パターンオーダー 2着 52,000円〜(1着あたり26,000円〜)
- 麻布テーラー: パターンオーダー 38,500円〜
考えてみてください。
骨格に合わない1着3万円の既製スーツを「なんか違うな…」と思いながら2着買い直すのと、
最初から骨格に完璧に合った1着5万円のオーダースーツを着るのと、
どちらがビジネスパフォーマンスと満足度(=費用対効果)が高いでしょうか。
答えは明白です。



オーダーって贅沢品だと思ってたけど、案外現実的なんだね。“合わない服”を買い続けるストレスを考えたら、むしろ安いかも…。



その通りです。“自分に合わないスーツを買い直す”という無駄なコストを払うより、最初から骨格に合わせた一着を選ぶ方が、時間的にも精神的にも合理的です。
今日のまとめ
スーツが似合わないのは、あなたのセンスや体型のせいではありません。
それは、生まれ持った「骨格」という設計図と、着ているスーツの「構造」がミスマッチを起こしているだけ。
- 骨格タイプは体型よりも“似合う軸”を決める指標。(ストレート=立体的/ウェーブ=華奢/ナチュラル=フレーム感)
- ストレート・ウェーブ・ナチュラルそれぞれに“勝てる形”がある。(ハリのある素材、柔らかい素材、ラフな素材)
- 骨格に基づくオーダースーツは、最短で自信を取り戻す方法。(「合わない服探し」を終結させる、最も合理的な投資)



つまり、“似合う”はセンスや努力じゃなくて、構造の理解なんだね。



その通りです。スーツも人生も、“整える場所”を間違えなければ、誰でも必ず変われます。……でも、ぼくはまだランドセルなので、スーツの構造より給食の構造が気になります。今日のメインは何でしょう。
編集後記
骨格診断は、単なるファッションの流行りではありません。
それは「自分を知る技術」であり、「自己肯定感を高めるロジック」です。
スーツを着るたびに、鏡の前で小さくため息をついていた人こそ、
「構造」を理解することで「自信」に変わる瞬間を体験してほしい。
“似合わない”を“観察”に変える。
“体型のせい”を“設計図の確認”に変える。
それが、私たち「スーツが合わないダメンズ」のゴールです。
