「スーツが合わないダメンズ倶楽部」編集部、真島シンジ(38歳)です。
スーツを買いに行かなきゃな、と思うたび、なぜか無意識に肩に力が入る。
あの独特の静けさ、明るすぎる照明、そして、フロアの向こう側からこちらをスッと見定めるような店員さんの視線……。
彼らが一歩近づいてくるだけで、心臓が妙に早くなる。
「何かお探しですか?」
そのひと言が、まるで尋問の開始合図のように聞こえてしまうんです。
SNSを覗けば、僕と同じような悩みを持つ仲間たちの声がたくさん見つかります。
- 「スーツ売り場が怖い」
- 「店員が苦手。なんか上から目線で冷たい」
- 「しつこい声かけが嫌で、すぐ店を出てしまう」
でも、その“怖さ”の正体って、本当に店員さんの性格が悪いからだけなんでしょうか。
実は、僕たち自身の「心理」や「思い込み」に、その原因の多くが潜んでいるようなんです。
この記事では、僕のような“売り場恐怖症”を抱える男性に向けて、スーツ店で過度に緊張してしまう理由と、心をラクにして「自分ペース」で服を選ぶための具体的な接し方のコツを、データや心理学を交えて解き明かしていきます。
シンジいや〜、ソウタ君。僕さ、スーツ見に行くだけで本当に緊張するんだよね…。なんか、あの店員さんの目が怖くてさ…。



それは“怖い人”だからというより、“慣れない空気”に対する緊張かもしれませんね。
なぜスーツ売り場は“怖く感じる”のか
まず認めなければならないのは、スーツ専門店が、他のカジュアルな服屋とは明らかに異なる「空気」を持っているという事実です。
一般的なアパレルショップよりも空気がピシッと張りつめている。
照明はショーケースを照らすかのように明るく、商品は寸分の狂いもなく整然と並べられています。そして何より、そこで働く店員さんたちのスーツ姿は完璧です。
その“整いすぎた空間”こそが、僕たちのようなダメンズにとって、強烈なプレッシャーになります。
「こんなヨレたTシャツで入ってきて、場違いじゃないか?」
「自分は、ここにふさわしくないんじゃないか?」
そんな不安が、無意識に心を支配してしまうのです。
心理学的に言えば、これは「自己呈示不安(じこていじふあん)」と呼ばれる状態。
平たく言えば、「自分が他者からどう見られているか」を過敏に意識しすぎている状態です。
「スーツの知識がまったくないのがバレたらどうしよう」
「自分のサイズもわからないなんて、恥ずかしい」
そう思えば思うほど、店員さんの何気ない視線や「いらっしゃいませ」の声かけすら、“自分を値踏みする攻撃”のように感じてしまう。
本当は「ちょっと見ているだけです」と一言返せばいいだけなのに。
その一言が言えない気まずさ、断れない申し訳なさ。そうした感情がねじれて、「怖い」という便利な言葉で自分を守る“防衛反応”が生まれるのです。



ああ…たしかに。“何も知らない自分”がバレそうで、やたら焦るんだよね…。



知識を持っていることより、今は“見る姿勢”を持つことが大事です。評価される側ではなく、観察者としてお店を眺めてみましょう。
「試着が恥ずかしい」と感じる心理をやさしく解き明かします。→ 👉 試着が恥ずかしい人へ|「似合ってない」と思われる不安を消す3ステップ
店員側の本音と“怖く見える”理由


では、店員さんたちは、僕たちを怖がらせようとして、あの態度を取っているのでしょうか。
もちろん、そんなはずはありません。
彼らが冷たく見えたり、威圧的に感じられたりするのは、必ずしも性格の問題ではなく、業界特有の「事情」や「ルール」が大きく関係しています。
アパレル業界の情報を扱う「mensnonhen.com」などの取材記事を読むと、多くのスタッフは「お客様に本当に似合うものを提案したい」「満足して帰ってもらいたい」という純粋な意図で接客していることがわかります。
ただし、そこには“誤解”を生む構造があります。
特に、高級店や老舗のテーラーになるほど、スタッフの服装や言葉づかい、立ち振る舞いには厳格な基準が設けられています。
彼らは、笑顔でフレンドリーに接することよりも、「ブランドイメージを毀損しないこと」や「専門家として正確な情報を提供すること」を優先するよう教育されています。
その結果、どうなるか。
口調は自然と硬くなり、断定的に聞こえやすくなります。それが僕たち客側からすると、「上から目線だ」「圧がある」という誤解につながってしまうのです。
さらに、あの恐怖の「声かけ」。
あれは、仕事上の「ルール」に過ぎません。
多くの店舗では、「お客様が入店されたら、30秒~1分以内に必ずファーストアプローチ(最初の声かけ)を行う」よう指導されています。
これは「押し売り」をしたいからではなく、むしろ「お客様を放置しない」「困っていたらすぐ対応する」というおもてなしのルールが、マニュアル化されたものなのです。
つまり、僕たちが「来た!」と身構えるあの瞬間は、店員さんにとっては「確認のためのルーティンワーク」でしかない。
彼らもまた、店のルールとお客様の空気感の板挟みになっているのかもしれません。



なるほど…店員さんも好きでやってるわけじゃなく、マニュアルに従ってるだけなんだね。



ええ。怖いと感じる態度の多くは、“丁寧さの副作用”みたいなものです。あなたへの敵意ではありませんよ。
「押し売りが怖い」と感じるあなたに、安心できる店選びのコツを紹介。→ 👉 スーツ店の「押し売りが怖い」を解決。安心できる店の見分け方と法律知識
怖さを減らす店選びと接し方のコツ
理屈はわかっても、染み付いた苦手意識はすぐには消えません。
もしあなたが「やっぱり怖い」と感じるなら、まずは**戦う場所(お店選び)**を見直すことから始めましょう。
お店によって、「接客の温度」はまったく違います。
たとえば、僕もよく利用する「THE SUIT COMPANY(スーツカンパニー)」などは、比較的接客が柔らかく、店員さんとの距離感が絶妙です。
良い意味で「放っておいてくれる」感覚があり、自分のペースでじっくり見たい人に向いています。
一方で、「AOKI」や「洋服の青山」といった郊外型の量販店は、ファミリー層も多く、会話のテンポがゆるやかです。
基本的なマナー研修が徹底されているため、初心者にもわかりやすい言葉でゆっくり説明してくれる傾向があります。
いきなり敷居の高いセレクトショップや百貨店のスーツ売り場に飛び込むのではなく、まずは自分がリラックスできる“テンポ”の合う店舗を見つけること。それが、何よりの安心材料になります。
そして、お店に入り、いざ試着をする(あるいは、しない)前に、
次の3つのステップで心を整え、先に伝えてしまいましょう。
- 予算を先に伝える
- 用途(目的)を明確に言う
- 【最重要】自分のペースを宣言する
「今日は、だいたい〇万円くらいまでで探してます」
これを言うだけで、無理な高額商品を勧められるストレスから解放されます。
目的がハッキリすれば、店員さんも的確な提案がしやすくなり、無駄なやり取りが減ります。
「すみません、ちょっと話しかけられるのが苦手で…」
「自分でゆっくり見たいので、気になったらこちらから声かけますね」
最後の一言、勇気がいりますか?
でも、これを笑顔で(ここが大事です)伝えるだけで、ほとんどの店員さんはあなたの“距離感”を理解し、尊重してくれます。彼らも、お客様に嫌われたいわけではないのですから。
もし提案されたものが違った場合も、慌てる必要はありません。
「ありがとうございます、素敵ですね。でも、もう少しシンプルなものも見てみますね」
このように、一度受け止めてから柔らかく断る。
関係性を「切る」のではなく「距離を取る」ことで、売り場のあの独特な緊張感は、不思議と消えていくものですよ。



“苦手で…”なんて、こっちから言っていいんだ! それが言えるだけで、めちゃくちゃ気がラクになるなぁ。



ええ。“伝える勇気”が、その場の空気をコントロールし、怖さを減らす第一歩です。
店員に話しかけられたくない時のスマートな対処法をまとめました。→ 👉 「見てるだけ」が言えない…スーツ店で話しかけられたくない時の対処法
スーツ店で緊張しない“心の整え方”
店選びや接し方のテクニックを身につけても、まだ心がザワザワするかもしれません。
その怖さの根っこには、「失敗したくない」「ダサいと思われたくない」「変な客だと思われたくない」という強い不安があります。
でも、考えてみてください。
スーツ選びは、学校のテストのように“評価”される時間ではありません。
それは、今の自分をリセットし、“整える”ための時間です。
だから、まずは視点を変えてみましょう。
「店員に見られている」と思う代わりに、「自分が店員と商品を観察している」と、視点を反転させてみるのです。
鏡の前に立ったら、店員さんの顔色をうかがうのはやめましょう。
鏡の中の自分を、まるで第三者のように、冷静に見つめてみる。
「肩のラインは合っているか?」
「着丈は長すぎないか?」
「この色は、自分の顔色を明るく見せてくれるか?」
それだけで、心理的な主導権は、あなた自身に戻ってきます。
さらに、店員を“敵”や“審査員”と見るのではなく、“無料のアドバイザー”あるいは“スーツの専門知識を持ったアシスタント”と見ることです。
提案が気に入らなければ、無理に受け入れる必要は一切ありません。
「ありがとうございます。今回はやめておきます」
「もう少し考えてみます」
それだけで十分なんです。
僕たちが過剰に「怖い」と感じてしまうのは、もしかしたら「断る=失礼だ」「買わない=悪い客だ」と、心のどこかで強く思い込んでいるからかもしれません。
でも、スーツ店の店員さんも、結局はプロとして「お客様に似合う一着を見つけて、笑顔になってほしい」と願っているだけ。
そう思えば、あの真剣な眼差しも、少し違って見えてきませんか?



そっか…。彼らは怖い人じゃなくて、ただ“真面目な人たち”なんだな。



そうです。相手の立場やルールを理解すれば、不要な緊張は自然と消えていきますよ。
高級スーツ店が怖くなくなる、初心者のための安心ガイド。→ 👉 【初心者向け】高級スーツ店に入りづらい理由と失敗しない初めての利用ガイド
まとめ:今日のスーツ反省会
「スーツ屋が怖い」という感情。それは、相手が発する威圧よりも、僕たち自身の内側にある緊張や不安が、鏡のように反射していただけなのかもしれません。
- “怖い”の正体の多くは、店員個人ではなく、場の空気や「評価されたくない」という自分の緊張感。
- 店員の真剣な表情や声かけは、敵意ではなく「プロ意識」や「販売ルール」の裏返しであることが多い。
- 「店選び」「予算・目的・苦手なことの事前申告」「視点の転換」で、売り場は“怖い場所”から“安心できる空間”に変わる。



なるほどなぁ…。スーツって、服を選ぶ前にまず“心のサイズ”を相手と合わせることから始まるんだね。



その通りです。スーツも人間関係も、適切な“合わせ方”がすべてです。……まあ、私の場合、まだランドセルとの合わせ方しか知りませんけどね。
編集後記
“店員が怖い”という漠然とした不安は、“今の自分が整っていない”という、自分自身からのサインでもある。
スーツ売り場は、他人と自分を比べる場所じゃない。
昨日の自分より、今日の自分を少しだけ“整える”ための鏡だ。
見る角度をほんの少し変えるだけで、怖さは、頼もしさや優しさに変わっていく。
今日もまた、隣に立つ小さなアドバイザーの一言が、そのシンプルな事実を、静かに教えてくれた。




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